二人だけの

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   向こうもこちらの存在に気付くと、先程のゴタゴタなど気にも留めていないように、平然と話しかけてきた。 「小野寺さんって、なんであんな人たちとつるんでるんですか? 同類なんですか?」  彼女は顔採用ではなく、おそらく学歴採用だった。  東大卒らしい。しかし、うちの馬鹿社長は人を見る目が無いので、問題発言を連発する彼女の素性をもちろん見抜けなかった。  彼女は可愛くない訳ではないが、ショートカットでややつり目、さらに歯に衣着せぬ言動は小宮と真逆で、特に男性社員から敬遠されていた。これで仕事はできるのだから、嫉妬もあったのだと思う。  俺は彼女の問いに素直に答えた。 「ああ、同類だな」 「クソですね」  十も歳上の先輩に、清々しいくらいに言い放つ。俺は笑った。彼女も一応女性だが、坂口に何を言われようとも気になることはない。  何故なら俺の『ど真ん中』は、小宮加奈子だったからだ。  俺は浮かれ気分を抑えきれずにいた。  
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