二人だけの

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   * 「そんなに歳上の人と結婚すると、ジェネレーションギャップとかあるでしょ」  数ヶ月前の飲み会で、俺はうまいこと彼女の横の席に座ることができた。  それができたのは、彼女が結婚したことで彼女の注目度が下がっていたからだろう。横にいると彼女はきめ細かい気配りで酒を注いでくれ、俺は一人優越感に浸っていた。  お銚子を持つ彼女の薬指には、指輪が光っていた。  金を持っている割には比較的シンプルなものだ。もしかしたら、なんでも無いように見えて高額なのかもしれないが。 「そうですねえ。話とか、全然合わないですよ。小野寺さんと話してる方がまだ話しやすいくらいですから」  彼女はくすくすと笑いながら話す。そのおっとりした口調がまたなんとも可愛らしかった。 「なあ、なんで旦那と結婚したの?」  酒が入っていることもあり、つい核心をついてしまった。しかし、周りは他の話で盛り上がっておりまたと無いチャンスでもあった。 「……教えてあげましょうか?」  彼女はわざとらしく小声になると、ふふ、と笑った後に囁いた。 「お金。遺産目的、ですよ」  やっぱり、と思った。  一方で、彼女の口からそんな言葉が出るとは思わなかった。  どうせ、優しいところが好き、とかああ見えて格好いいから、とか当たり障りのない言葉ではぐらかされると思っていた。  彼女は内緒ですよ、と言ってくすくす笑っている。俺は何でもないような顔をして答えた。 「へえ……やっぱり、生きていく上でお金は大切だもんね」  このことは、誰にも言わないでおこうと思った。  まあ、言わずとも誰もが思っていたことだが、『二人の内緒』が彼女を手に入れるアドバンテージになると思ったのだ。  ……そう。俺は彼女の本心を知っている。  
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