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前に立ち止まる少年は顔を真っ赤にしながら私を少し見上げ気味にいきなり言い放った。 「す、すきです!」 たった一言をとても大きな声で言い放つと目の前に腕を勢いよく前に差し出した。 手にはピンクのコスモスの花が一輪握られている。 顔を真っ赤にし恥かしそうにしながらも、強い視線で一瞬私の瞳を覗き込む。 そして俯いた。 私に花を受け取ってという意味だとはわかった。 しかし咄嗟の出来事に、私はどう対処していいかわからず硬直してしまう。 そしてツバサ君より少し後ろから視線を感じる。 そこにはマスターがこちらを見て笑顔で何度も小さく頷いている。 ああ、そうか、受け取れということらしい。 それもそうだなと思う。 ここで彼を傷つけてはいけないと思う。 私はツバサ君が差し出すコスモスを受け取り 「ありがとう」 と笑顔を精一杯作って伝えた。 するとその瞬間、少年は顔を上げてパッと輝くような表情を見せると扉まで走って行った。 そして扉を乱暴に開けたのであろう。 店内にはガランガランガランとドアベルが大きな音をたてて扉が閉まる。 僅かな静寂の後、マスターと私は二人で顔を見合わせて「プッ」とどちらからともなく噴出した。 一瞬の出来事。     
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