第一章 三人と一匹

2/19
前へ
/133ページ
次へ
士郎(しろう)さん」 「……」 「士郎さん」 「……」 返事が無い。 「士郎さん」 「……」 「士郎さん」 「……」 「……今日の私の下着の色は」 「何色だい、彩女(あやめ)ちゃん」 「聞こえてるじゃないですかっ!!」 私は、割り当てられた灰色のデスクを思い切り叩いて言った。 「何ですかこの領収書!」 と言って、問題の紙を隣に座る彼に見せる。 「十六万八千円!こんなの、経費として認めませんよ!!」 「お偉方の接待だって~」 まぁまぁ、という感じで、士郎さんが両手のひらを私に見せてきた。 はぁ、と私はため息をつく。 「この宛名は何ですか?」 「宛名?ああ、ちょっと事情があって俺の名前に」 「”改準寺士郎(かいじゅんじ・しろう)ちゃん。はぁと”の”ちゃん。はぁと”は何です?」 「愛しのメグちゃんの気まぐれだね」 「先生」 この、私達の机二つから少し離れた所。 ボスっぽい、高価そうな木の机と椅子に座って、優雅にコーヒーを楽しんでいる”先生”こと崎伝道(さき でんどう)に、私は問い掛けた。
/133ページ

最初のコメントを投稿しよう!

51人が本棚に入れています
本棚に追加