第一章 三人と一匹

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「本当に接待なんですか、先生。これ」 言うと、先生が、コーヒカップを傾けたままで私と士郎さんを一瞥する。 涼しげな瞳と、顔の両端以外の髪の毛を全て後ろに回した、ツンツンのオシャレオールバック。 「本当ですよ」 「それみろ彩女ちゃん」 「彩女さんの思っている方が、ですね」 「ぐ」 士郎さんが言葉に詰まる。 「……それみろ」 私は言って、そのいかがわしい領収書を改めて士郎さんに突き出した。 「まあ、しかし」 と、そこで先生が息を吐いて言う。彼の座る大きな椅子が、体重をかけられてギッ、と鳴った。 「今回は大目に見てあげましょう、彩女さん」 「え?」 「士郎、それが清算されないと飢え死にしますから」 「はっ!?」 私は、思わず士郎さんの顔を凝視した。 「給料日まであと二十日あるんですよ士郎さん?」 「うん」 「勿論、私より給料貰ってますよね?」 「うん」 「何に遣ったんですか」 「車を一台」 と、それを答えたのは伝道さんだった。 「……そろそろ、家の駐車場が溢れてきますね?士郎」 「面目無い」 「そういう訳です彩女さん」 「……」 私は、その平仮名で「はぁと」など書かれているふざけた領収書を、バシン!と自分の机に叩きつけた。
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