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そんな完全無欠、最強の名探偵と凡人も凡人、単なる女子大生に過ぎなかった私の出会いはさて置いて。
どうして私がこんな所で事務的な作業に勤しんでいるかという事。その訳は、二ヶ月前に遡る。
内定通知が一つきた。
私を取り巻く大人達は、その報せに酷く歓喜した。
そりゃあそうだろう。図らずも大学きっての”問題児”に挙げられてしまった私の前途に、ようやく一筋の光が見えたのだから。
これで安心して眠れる。と、教授の一人が言っていた。
いや良かった。世の中色んな企業があるもんだな。
と、講師の一人が少し口を滑らせた。
とにかく、就職活動は続ける。駄目だったらこの唯一の内定先に入社する。
べきだろうか。
私はその日の帰り道、”内定先”に電話を一つ入れた。
「やあ、おめでとう!彩女ちゃん!」
「おめでとうございます、神有月彩女さん」
不可能探偵事務所。
そのドアを開けた直後、私はクラッカーのあの細い色紙に巻き込まれた。
ソファとガラステーブル、テレビが置かれた部屋。今日はそこに夥しい装飾がなされている。
豪華な料理が並べられたりしていて。
ご丁寧に”彩女ちゃん、内定おめでとう!!”の横断幕まで貼り付けられていたりして。
いんだけど。
いいんだけどさ。
……あんたらがこれやっちゃいけないんだよ。
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