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「伝道さん」
「はい」
紙に張り付いた色紙を煩わしく払いながら、私はこの事務所の主人に問い掛けた。
「どういう事ですか?」
「どういう事というのは?」
「とぼけないでください」
私は言う。
「私、”不可能探偵事務所”なんて、受けてないですけど」
そう。
私の唯一の内定先はこのふざけた事務所で。
そしてここは受けておらず、要するに私は今この瞬間に至ってもまだ、相変わらず就職戦線で百戦百敗なのだった。
間。
「ご不満ですか、彩女さん」
テーブルの上の料理を、適当に小皿へと盛り付けながら伝道さんが言う。
「まあ、これでも食べなさい」
と、それを私の所へと差し出し、隣のコップにシャンパンを注いだ。
「何でですか?」
私は訊いた。
「何で、とは」
「どうして私に目をつけたんです」
伝道さんの目が涼しげに光る。
「言っちゃ何ですけど、ここ以外に内定ゼロですよ私」
「知ってます」
「資格は多少有りますけど、人間としての素質は多分、人より数段劣ってますよ」
「知ってます」
「じゃあどうして」
「彩女さん」
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