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「"ロミオとジュリエット"」
彼女はその長い髪を揺らせて、続ける。
「そのような二人であれば、私がそうであれば、そんな運命も受け入れられたのかもしれませんが」
「……貴女、旦那さんを愛していないの?」
「愛さねば、とは、思っているのですが」
花弁のような唇が、つい、と動いた。
「私は、今の家と運命を共にしたくはありません」
「……滅びる前提で?」
「そうです。今日、貴女に会えて良かった」
「……」
「事態が呑み込めていませんか?」
「そりゃあね」
仕返しするかのように、私は言った。
「いきなりそんな、ぎゃーぎゃー言われても。貴女どこの人?どうしてそうなるの?って。それだけしか浮かんでこないわ」
「七浜家」
彼女は言う。
後になって復習した事だが、それはつまり"宗紋家"の家名の一つだった。
それも、四つある本家の一つ。
もっと言えば宗紋家で唯一"分家を持たぬ家系"。
宗紋家で最も古く、最も一族の結束が強い家らしい。
「お相手の方は、鍔番家」
彼女は続ける。
「私の名前は鍔番華。訳あって嫁入りした、七浜家の人間です」
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