51人が本棚に入れています
本棚に追加
「でもきっと来てくれる」
彼女は一歩下がって、再び席に座った。
私は右手を下げる。白く、きちっと折られた折り鶴がその手の中にあった。
「……貴女、お優しいでしょう?」
「優しくなんかないわよ」
「嘘」
彼女の見た目は、私と同じか、それより下ぐらいの若さに思えた。
「すごく優しい。人の為に使う涙が、その目に隠れておいでですもの。何方かと言えば、貴女の方が私の王子様」
私達を乗せた電車が揺れている。
揺れているが不思議と、強い横揺れは無かった。
「覚えておいて頂けると、助かります」
彼女は言う。
「もし、力を貸していただけるのであれば」
その白い手を出して。
先程の折り鶴を、指差した。
「その時はどうか、よろしくお願いします」
折り鶴。
私の手を先程取った、白い手。
微笑むお姫様。夢か現か。
最初のコメントを投稿しよう!