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撮影が終わったのは明け方のこと。
帰宅した僕は陽が昇り始め、うっすらと明るくなった窓の外を見た。
「さすがにこんな時間にはいないか...」
いつもの歩道橋には人影はなく、下を通る道路の車もまばらだ。
こんな時間に彼女がいなかったことに安心するとともに、少し寂しいような気持ちになった。
「寂しい...?なんでだろ?変な感じ」
自嘲してカーテンを閉めると、僕はシャワーを浴びベッドに身体を沈めた。
疲れた身体は貪欲に睡眠を求め、僕の意識はすぐに闇に堕ちた。
変な時間に寝たせいか、寝る前の考え事のせいか…夢を見た。
歩道橋の彼女が俯いて涙を落としている夢だ。
顔は長い髪で隠れていて見えないけど、全身から悲しみが溢れ出ていてこちらが泣きたくなるほどだった。
「どうしたんですか?どこか痛いんですか?」
夢の中の僕は声をかけるけど、何故かそれは言葉にならず彼女には届かない。
僕は近づくことも出来ずに、ただ泣き続ける彼女を見つめて立ち尽くすしかなかった。
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