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始まり-2
遠くはない過去を思い返す。
ハンターの息子である俺は、当然の如く闘い半ばで死んだ親父の跡を継いだ。死んだ母は魔物に襲われかけた過去があった。そして、ハンターとしての親父の生きざま、死にざま。それは俺の中に他の選択など浮かばないほどの影響を与えている。
親父のハンター仲間を師匠と仰ぎ、一人前のハンターになって間もなく、俺はヴァンパイアのアジトを見つけた。
(1人で潜入するか?)
けど俺は自分を過信するタイプじゃない。自分1人で複数のヴァンパイアを何とか出来るなんて、微塵も思っちゃいない。誰か助っ人が要る。
ただ情報は集めておきたかった。だからそのアジトに偵察に行ったんだ。
そこで俺が見たのは、夕闇の中、髪の長い女性を腕に抱いてその血を啜っている魔物だった。
振り向いたその目は深紅。唇の端から一筋の血が垂れている。逆立つ黒髪。見たこともないほどの美しい顔。
時が止まったようにそこに妖艶な空気が流れていた。しかし、魔物は魔物。見渡せば4つの死体が転がっている。
その美しい魔物はふっと笑みをこぼすと、風のように消えた。呆然としていた俺は、慌てて5つの死体の傍に行った。犠牲者だと思った5人。だが口の中を調べると牙がある。全部ヴァンパイアだった。
その時から、ヴァンパイアの狩りになると行く先々でその死体の山を見るようになった。
いつしか俺はあの深紅の瞳を探すようになっていた。もう一度会いたい。そして、あの魔物をこの手で狩りたい。
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