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「思い当る節があったな? そら、抱き返せ、弟よ!」
なんてバカ力だ! 俺は銃を持った片手ごと抱きしめてくる腕を振りほどくことが出来ない。
「そうか! お前も懐かしくて言葉に詰まったか!」
ふっとその力が抜けた隙に俺はその腕から抜け出した。
「ふざけるな! 訳も分からず兄だと言って押しかけて来た男を『はい、そうですか』と受け入れるわけ無いだろ!」
「おい、そんなに勢い込むな。銃はしまった方がいい。うっかり引き金引いたらどうすんだよ。俺に当たったらシャレにならねぇぜ」
言いながらベッドの端に腰を下ろす。
「ノア。本当に俺は兄貴だよ。お前が小ちゃい時に一度会いに行ったんだぜ。お前の首筋に赤い痣があるだろう?」
俺は思わず首を触った。
「どうして知ってる!?」
「だって、それ、俺がつけたからさ」
「つけた?」
「そ。いつでもお前を見つけ出せるようにな」
にっと笑うその唇は、どこかで見たことのある赤い色だった。
俺は少しは話を聞いてみようという気になっていた。誰も知らないはずの首の痣を知っている男。毒気の無い顔でへらへら笑っている。とても悪党や強盗には見えない。まして、魔物が入り込んできたとも思えなかった。
「あんた、何者だ?」
「呑み込みが悪いな、兄ちゃんだと言ってるだろ? いい加減理解しろよ」
「無理に決まってるだろう! どこにそんな証拠があるんだ!」
「俺の記憶の中。お前、可愛かったなぁ。まだ4つくらいだったか。母ちゃんが、一目だけだと言って会わせてくれたんだよ。それで母ちゃんの目を盗んでお前の首に痣をつけといたんだ」
分かっただろ? そんな顔をしている。
「ならどうして一緒に育たなかったんだ?」
「聞きたいか?」
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