たったひとつの(カッコ・カッコトジ)やりかた

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 つまり・・・『それ』は、最初から、これが目的だったのだ!  終始、まとわりついたいらつき。違和感。スムーズに過ぎた取引の過程。なんのことはない、それらはとどのつまり、これを示唆していた。  『それ』は裏切っていない。本能的に分かるのだ。俺の望みは完遂され、永遠の命はもたらされている。  さらに最初から企図していたことを遂行するのは、裏切りなどではない。  俺が提示した条件を瞬間的に、しかし徹底的に精査し。数少ない隙を合理のもとにこじあけて、この状態にもっていった。  『それ』にとっては既定事項なのだ。これは。  わからないか? わからないのか、ほんとうに? 俺が言っている意味が。  『それ』は、くどいほど、あからさまにヒントを垂れ流していた。それもまた、後の愉しみを増大させるスパイスだった。  くどければくどいほど。あからさまになれば、なるほど。後でゲームのゴールに手をかけ、勝ち誇る馬鹿な、ひとりよがりの契約者を、どん底に叩きこむことができるから!   『それ』は・・・あいつは・・・あいつらは、神をのぞけばその言葉通り、永い存在だ。さらに強大な力での消滅はありえるかもしれないが、通常、死ぬことはない。  常に倦み、すべてに飽食し。退屈に苛まれている。だからーー娯楽が必要なのだ。  永遠に等しい、時間という『唯一にして最大の敵』に対しての『暇つぶし』が!  俺は、この先、その『暇つぶし』の玩具となる。  そうじゃあないか。  事実上、金縛り状態になっている俺の意識内では、これからどれだけの時間が流れると思う? 目の前の指から離れたペンが倒れるのに要する時間は、現実世界なら1秒もない。だが、その1秒が経過するまで、俺はいったい何年過ごすことになるのか。  数年? 数十年? 数百年? 数千年? それとも・・・?  これは、『それ』がいみじくも例えたーー石化して、なお意識が残る状態とほぼ変わらない。  が、根本的に異なるのは石化した体はいつか風化して終わりが来るが、限界までスローになった時間世界に終わりはないのだ。  人間が精神に異常をきたすのは、いわば負荷に耐えかねて安全装置が働くともいえる。      
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