たったひとつの(カッコ・カッコトジ)やりかた

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 この角度だと、『それ』の姿が見えないのが唯一のメリットだろうか。  もちろん、『それ』は今もいる。い続けている。  俺には分かる。消え失せてなどいない。  近づいてくれば、ありったけのドス黒い思念をぶつけてやろうと思った時期もあったがーー何の意味もないと、今では憤ることすらやめた。恨み、後悔、怨念、自虐、その他すべて無意味だと思いしらされたーー永い永い時間のあいだに。  ああ、俺の思考状態か? この通り正常きわまりなく、また明晰だよ。  言ったっけ? 保証されているからな。永遠に異常もきたさず、健康・健全であると。意識を失うことなど絶対にないし。まして、頭が白紙状態になることは、ありえない。現実には1秒もたっていないおかげで、睡眠状態になることもない。  ちょっと、想像してみてくれないか? 間断なく、何かを考え続ける苦痛というものを。ぼうっとすることすら、できないんだぜ? そんな状態に耐えられる人間がいるとでも?  いない。  いわば、強制的にノーマルであり続けている俺をのぞいては。  色んなことを考えた。やりたくなくても、そうなるんだ。何しろ、『外』からの刺激というものが、皆無だものな。言ったっけ? 言ったよな?  たとえば、これまで俺みたいに、無謀な挑戦に狂奔したやつらのこと。  『それ』が人間を相手にする以前は、どんなものと契約ごっこをしていたのか、とか。  猿人? 恐竜? 先住人類? いやいや、他の星の何かかもしれないな。  まあ、そいつらも、ほとんど全て、玩具にされたのだろうけれど。  それから・・・これまでの人生のことこまかな、ことごと。  あたりまえだった、日常。野心と野望に満ちていた、俺の人生。アア・・・ア・・・ア・・・  あらゆる出来事の回想。知ってる人間の名前。特徴。電話番号。郵便番号。羅列するから、つきあってもらえるかな?   ハハハハハ。  ・・・・・・・・・・・・アハハハハハハ。  やりたくなくても、苦痛であっても、考え続ける。  で、なければーーこの先のことに想像が及んでしまう。  とてつもない、恐怖と絶望だ。陳腐な表現だろ。俺だってそう思う。陳腐だが・・・ほんとうだ。  他に言いようがあったなら、教えてくれ!          
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