たったひとつの(カッコ・カッコトジ)やりかた

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「永遠の命か・・・」  影のように見える女。それとも、女のように見える影か? まあ、どちらでもいい。『それ』ということにしておこう。俺にはどうでもいいことなのだし。  とにかく、都内にある超高級マンションの一室。俺の書斎に現れた『それ』は、ルビーのように輝く二つの眼 (ひょっとすると、三つかもしれないが・・・それもまあ、どうでもいい) で俺を見おろしながら、蔑んだ口調で言ったものだ。  俺は、だからといって気分を悪くなんかしなかったし、まして怯むなど論外だった。  『それ』は、ゆうに天井に届くほどの大きさであったし、声は直接、頭のなかに響いてくるカンジだったが・・・それがどうした。 本番は、これからなのだ。 「ああ、その通りだ。文句でもあるか」 「いや」  『それ』は、こんどこそあからさまに嗤ったようだ。 「苦労して私を呼んだのだろう? その・・・ナントカという仕掛けを使って、な」  PCのことか? ああ、苦労したさ。  実際には、スーパーコンピューターの力を借りたんだ。  俺は一冊の魔導書も持っていないし、魔法陣とやらの書き方も知らない。しかし・・・。 「あんたたちが、いつからかは知らないが『道しるべ』をまき散らしていたからな。最初は分割型のウィルスかと思ったよ。けれど、調べていくうちに色々、分かってきた。金も時間も、相当かけたけれどな。まあ、それはいい。ようやく、あんたに会えたわけだからな」 「ふうん」  退屈しきった声だ。 こいつらにとっては、聞きあきた台詞なのだろう。  何しろ、神とやらの声を聞いたという人間は、現在ただ今まで腐るほどいるが。現物にお目にかかった御仁は皆無。  一方、こいつらのことは、歴史上あふれかえっている。  利用したやつ。利用しようとして破滅したやつ。下僕にしたやつ。されたやつ。  そうして、交渉を試みたという伝承・記録・文献等々は無数だ。  あの、前世紀でもっとも悪名の高い独裁者も、こいつを利用しようとしたとか、どうとか。  まあ、結果論で言えば、失敗したんだろうな。  それくらい、こいつらとの交渉は困難なんだ。  それを、俺は、これからやろうとしているわけだが。  『取引』、を。
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