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「なんだか顔色が優れませんね?大丈夫ですか?」
彼女は私に近付き上目遣いで顔色を窺った。ここで「私はAIだ。体調など悪くなるはずない」とでも言えれば彼女も幻滅して本性をさらけ出してくれるかもしれないが、それは私の良心が抑え込んだ。
「いや、時差ボケで体調を崩しただけだから気にしないで」
「そう、なの。堪えられなくなったら言ってくださいね。私も軍人ですから近くのホテルまで担いでいきますからね」
「ありがとう……」
私は視線を逸らしてそう言うと、彼女はより心配そうにこちらを見つめていた。これも全て演技かもしれない……そう思うだけで心が引き裂かれそうになる。そう思う自分も嫌で、ますます心が締めつけられた。もうこんなのたくさんだ。早く訊いて心を平常心に戻そう。
「君は私の事が好きですか?お互い敵国の軍人同士というのを除いて……」
言葉を発すると白い息が口から出ていった。高性能ロボットスーツというだけあって本当の人間に近い存在になっていった。でも、私は所詮AI……この心でさえも誰かがシステムを初期化すれば消えてしまう脆い物……この心は本当に自分の物なのかな……
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