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【side1】百物語
「……振り向いたら、首だけがっ……!!」
「「「ギャー!!!」」」
「……いや、そんな怖くもないから。雰囲気だけで叫ぶな」
海の冷静な突っ込みは、その後も静まらないさざめきにかき消される。
真夏と言いながらも快適な施設内の某会議室で、高校生組が要するに時間つぶしの「百物語」もどきを行っていた。火の類は厳禁なので蝋燭もなければ、懐中電灯も百本は揃えられないので話のたびに消すでもなく何本かを点けっぱなしである。おまけに話の内容そのものがどうしようもなく陳腐でありきたりであり、正直少しも怖い雰囲気ではなかった。それでもともすれば合宿のようなそのチープな空気を、まるで普通の少年少女に帰ったように楽しんでいたのも事実であり。
(なんか、こういうの久々かも)
その中で、提供できるような怪談は持っていなかったにしろ、何だかんだと蓮も多数に混じって楽しんでいた。
五人くらいが話し終わったところで、ふいに入口がカラリと開き、中のメンバーはぎょっとしてそちらを一斉に振り向いた。すると細く開けられたドアの向こうから、片桐橙子が片目だけでこちらを覗いていた。
「あ、橙子サン……」
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