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『いいわよ。付き合ってあげる』
付き合ってみると気が強く我が儘なお嬢さんで最初はそれも魅力だったが、晴翔の高校の付属大学に進学し、陸上を止めて服装も髪型もただの女になっていく彼女に対する気持ちは次第に冷めて行った。これという別の女がいないから惰性で付き合ってきたが、雅人に会ってはっきりわかった。もう、恋してない。
晴翔は彼女からシャツを奪い返して羽織りながら言った。
「夏希さあ、変わったよね。俺、黒髪のショートが好きだった」
「え、これ・・・似合わない?」
彼女は少し狼狽えて明るい色に染められて柔らかくうねる自分の髪に触れた。
「いや、よく似合ってるよ。そっちの方が好きな男もいっぱいいるんじゃない?」
「どういう意味?ねえ晴・・・」
女を振り払い素早く服を着ると、晴翔はテーブルに金を置いて立ち上がった。
「好きだったよ。今までありがとう。じゃあね」
「何よ、変わったのは晴翔じゃない!」
彼女はまだ何か叫んで投げつけてきたが、晴翔は構わず出て行った。
煩わしい。どうでもいい女にこれ以上構っていられない。
雅人に会いたい
雅人の声を聞きたい
雅人に、触れてみたい
(35のオッサン、しかも実の叔父とかウケるし)
でも間違いない
完全に落ちた
好きかどうかなんてわからない
ただ・・・
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