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(え、デート?いや落ち着け、あの人から見たら俺は、甥だ)
晴翔は携帯から顔を離して深呼吸してから答えた。
「はい。何処へ行けばいいですか?」
『ああ、地図送る。じゃ、後でね』
晴翔はすぐ地下鉄を乗り継いで指定されたカフェに向かった。高層ビルの一階にある真っ白なオープンカフェだ。雅人を見つけるのに一秒も掛からなかったが、彼は店の入り口ではなく隣のマンションの入り口を見ていた。当たり前だが、今日は喪服ではなく水色のシャツに紺のパンツだ。美しく見えたのは薄明かりの中の喪服姿だったからかもしれないと幻滅を覚悟していたが、昼間見るラフな服装の彼もまた美しかった。その彼の横顔を見つめながら近づいて行くと、テーブルの一歩手前で、ようやく気づいてくれた。
「やあ、本当に来てくれたんだ」
「はい、急で驚きましたけど」
晴翔はそう答えて向かいの席に座ろうとしたが、雅人は別の椅子を引いた。
「こっち座ってよ」
「あ、はい」
雅人の席の斜め隣、さっきまで見ていた方向にある椅子だ。その意味を考えた晴翔は、自分が呼ばれた理由に気づいてしまった。
「あのマンションに出入りする人監視してるんですか?ラインのアイコンと服の色を合わせてるのも誰かへのメッセージですか?」
雅人は晴翔を見ているふりをしてその背後を見ていた目を晴翔に向けて見開いた。
「晴翔くん鋭いね。いや、俺が下手なのか。そんなバレバレ?」
「観察力はある方だと思います。あなたの行動の意味には注意して見ていなければ気づかないでしょうが・・・さっきからずっとあそこの席の女性グループがこっち見てます」
「えっ?ああ、晴翔くんカッコイイもんね。オジサン独りの方が目立たなかったかなあ」
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