第2章 私を朝まで抱いていて

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読み上げながら声が震えてきた。 この手紙は10歳の時に書いた。何度も何度も書いて、そのたびに殆どをストーブで燃やしたけど、この手紙だけは当時好きだった本の挟まって無事に保管されていた。 晴馬と一緒に暮らすときに見つけたものを、今日まで開封せずに大事にとっておいたものだ。 10年前の自分のピュアな気持ちが溢れ出す・・・ これを書いたとき、私は天の川を見上げていた。 織姫と彦星は年に一度でも会えるのに、どうして私はお兄ちゃんに会えないの? そんな気持ちを抱いて、寂しさと愛しさを同時に感じて書いた手紙だった。 いつかまた会える、という希望を捨てられなかった。 思い出すと辛いけど、楽しくて嬉しくて優しい思い出の日々が私の無機質な人生に体温をもたらしたことは事実だった・・・。 晴馬が一歩一歩ゆっくりと近付いてくる。 私はカーディガンのフードを下して、ボタンを外して、脱ぎ捨てた。
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