旅の始まり

2/6
前へ
/610ページ
次へ
「あっツゥ‥‥何処だ?此処は」 体を起こそうとすると、全身を襲う痛みに顔を歪めつつ、見渡す風景に唖然としてしまう。 何処までも続くと思える程に見渡す限りの草原だった。 遂さっき迄俺は都会のど真ん中に居た筈なのに、何故自然のど真ん中に居るんだ? と、そこまで考えた時に思い出す。 「そう言えば俺‥‥死んだんじゃ無いのか?何故生きてるんだ?」 訳が分からない。 都会のど真ん中とは言ったが、オフィス街とか繁華街みたいな所から少し離れた工業地帯に居た。 まあ、土木作業員として工場の中の工事現場に居たんだけどな。 そんな現場から100メートル位の所にデッカイガスタンクが有ったんだ。 見上げる程だからね。 そんなガスタンクの下の方で火花が見えた瞬間だった。 ボッと炎が上がったと思ったら、何かに吸い込まれる様にシュンッと消えてしまった。 えっ?と思考が止まってしまった俺の耳に、回りの作業員達が“逃げろ!”と叫ぶ声が聞こえて来た。 意味も分からずに居た時に、ガスタンクが爆発し、その衝撃波みたいなモノに吹き飛ばされ、俺は地面を転がった。 身体中が痛む中起き上がり顔を上げた先に見えた物は、俺に迫って来る灼熱の爆煙だった。 「ああ、俺‥‥‥死んだな」 そんなくだらない台詞を、死ぬ直前に吐いた後爆煙に呑み込まれ意識が途切れた。
/610ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3322人が本棚に入れています
本棚に追加