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それぞれの夫婦のカタチ
「はぁ~.....泣けるわぁ...。」
何かの本を読み終えて、妻の瑞恵がティッシュをボックスから引き抜いて鼻をかんだ。
そして、隣でスマホゲームを楽しんでいた俺の顔をじぃーっと見つめててくる。
「な.....なんだよ。」
「ねぇ、明日帰ってきて私が死んでたらどうする?私の死体と一緒に寝てくれる?」
「は?」
何の話だ?と瑞恵の手元の本のタイトルを見た。
『今夜、死体の隣で眠る』
「あぁ、なんか最近話題のケータイ小説ね。この前実写化されたのがテレビでやってたっけ?」
「あら、知ってるのね。ほらほら、どうなのよ?」
「あれは奥さんも素敵だったからなぁ。」
「なによ?私は素敵じゃないっていうの!?」
「だってさ、瑞恵は毎日布団干したり、シーツ洗ったりしてくんないじゃん。」
ケタケタと笑うと、瑞恵は「あーぁ、これだから家の旦那は!」と悪態をついた。
「イライラばっかりさせて、私の場合、本当に私が死んだらアンタのせいだわ!」
という。
半分本気、半分冗談って感じだな。
「ところで、何でこの本が家にあるの?」
「さぁな~。この前お前の友だち来てたろ?忘れてったんじゃない?」
「そうかな?...後で聞いてみようかな?」
何となく、どことなくだけど、瑞恵が一瞬はにかんで見えた。
泣いた後だからかな?
可愛く見えたというか...ちょっと新鮮だったというか...。
実はあの本俺も読んだんだ。
っていうか、俺が買ったんだよ。
帯の宣伝文に惹かれて...。
『読んだらきっと、パートナーが愛しくなる』
帯は外した。
買ったのが俺だってバレたら恥ずかしいじゃないか。
今夜、久しぶりに一緒に寝ようと誘ってみようかな。
『愛してる。』とは流石に言えないだろうけど
『俺より長生きしてくれよ。』くらいは伝えてみよう。
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