君の口癖

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処置室へ戻ると、まるで「デパートにでも行くのかい?」と問いかけたくなるくらい綺麗に化粧を施された妻が横たわっていた。 「あぁ...綺麗にしてもらえたんだね。」 血色が良く見える妻の頬に触れた。 当たり前だが、とても冷たかった。 いつか妻と一緒にデパートへ出かけた時、化粧品売り場で彼女が「一度でいいから人様にお化粧をしてもらいたいものだわ。」と言っていたのを思い出した。 妻はそれを叶えることが出来ただろうか? もし出来なかったのならば、こんな形でそれを叶えさせてしまってすまない...。 「ありがとうございました。」 妻を引き取って車に乗せた。 狭い軽自動車でごめん。窮屈だろうけど、すぐに着くから我慢してくれ。 家に着いた。 妻を運ぶ。 人って死んだらこんなに重いんだな...。 妻は割と小柄で細身な体型だったけど、ずいぶんと重く感じた。 普通はこういう時、子供たちを呼んだりしてるんだろうな...。 私たちには子どもがいなかった。 どういうわけか、彼女がそれを望まなかった。 夫婦二人。 それでも別に悪くは無かった。 小言を言われながらも、彼女との生活は楽しかった。 「おかえり。」 彼女を布団に寝かせた。 安らかなその顔は眠っているようにしか見えなくて、これが死んでいる人の顔だなんて思えない。 「なぁ...」 どうして死んだんだ?     
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