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――今日だ。今日こそ、やってやる。
深夜のコンビニ。雑誌コーナーで週刊誌を読みながら、俺――山田タカユキは、心の中で何度も自分に言い聞かせていた。一応手に雑誌は持っているものの、中身なんて全然入ってこない。立ち読みしてるフリをしながら、視線は何度もレジの方へと向かってしまう。
その視線の先――レジには一人の女性店員が立っている。
歳は多分俺と同じ二十一~三ぐらい。上は赤いこのコンビニの制服、下はジーンズに白いスニーカーという一見するとラフな格好だが、全然そんな印象はしない。背はすらりと高いモデル体型で、濃紺のスキーニ―ジーンズと白いスニーカーが彼女の長くて形の良い脚をより強調している。よく見ると結構筋肉がついているから何か運動でもしているのかもしれない。時折、制服の襟から見える肌は白くて思わずドキリとしてしまう。綺麗なショートカットの黒髪が蛍光灯に照らされて艶々と輝いている。
彼女の名前は小林さん(下の名前はまだ知らない)。出勤日は月~金の夜。まだ若いのに、こんな夜遅くにバイトをしているなんてきっと苦労人に違いない。そして心が綺麗なのも間違いない。
何故、俺が近所のコンビニのバイトさんについてこんなに詳しいのか? それは勿論、俺が小林さんに恋しているからだ。はっきり言って小林さんはかなり可愛い。彼女の顔を見る度に、鼓動が高鳴り、身体が硬直してしまう。
今でも思い出す。初めて出会ったあの日、バイトで疲れて夜食を買いにこのコンビニに来た俺に、彼女は笑顔でおつりを渡して――『遅くまでお仕事大変ですね』そう言ってニコリと笑ったのだった。
彼女は焼き肉弁当(580円)だけでなく、俺の心まで温めてくれたのだった。その日から俺は毎日コンビニに通うになった。通えば通うほど、ドンドン彼女のことが好きになっていった。しかし、いくら通ったところで彼女との距離が縮まることはなかった。会計の時に一言二言交わす程度。どうにか彼女とお近づきになる方法はないか。そんなことを考えて、もう一ヶ月が経った。
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