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特殊な環境で育ち、愛情を十分に受け取ることができなかった碧音君は。
「自分が必要だって、認めてもらいたい。難しいことだけど」
自分を傷つけるものは徹底的に排除し。
存在を認めてくれる人間は受け入れる世界を守るために。
「弱い自分は、いない。……いちゃいけない」
頑張って壊れては修復して、壊されそうになったら分厚い壁で覆った。
例えそれが、段ボールを接着剤で継はぎしたようなものだったとしても。
「奏は、死んだ」
かなでは、しんだ。震える声で紡ぐ。
碧音君は自分で自分を、一度殺した。
そうじゃないと、世界を守ることが出来なかったから。
ああ。不安定で危うくて、ちぐはぐな。
飛び込んだ君の世界は酷く脆くて。
どうしようもなく、儚かった。
「……碧音君」
「説教ならいらない」
「違うよ」
「暴力を振るわれて嫌だったかもしれないけど、それでも唯一の家族だとか、弱い部分も自分の一部だ、とかそういうの止めろよ」
「碧音君」
「吐き気がする、そんな言葉っ」
「あおいくん!」
「聞きたくない」
「言わない、私はそれが言いたいんじゃないよ」
一歩、二歩と距離を縮め青みがかった灰色の瞳を見つめる。
「ずっとずっと長い間暴力を振るってきた人間を親だと思え、なんて言えない。お母さんやお父さんにも事情があって碧音君に八つ当たりしただけだとも言わない」
「…………」
「いつかお母さんとお父さんに会いに行って話し合った方が良いそしたら和解出来る、とも思ってないから」
碧音君にとってそれらの言葉は心臓を抉る凶器でしかないのだ。
碧音君を、傷つける。
「でもね」
私、思うんだ。
「弱い自分を、優を捨てたことに罪悪感を感じているのは碧音君自身じゃないのかな」
「何、それ……」
碧音君の表情を見てて、感じた。意味が分からないと言わんばかりに眉を寄せ目を細める彼。
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