1人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
雨が庇を伝って幕のように降り、外の景色がまるで見えない。
二人は木でできた狭い長椅子に、微妙な距離を開けて腰かけた。
少女は夏越と同じ高校の制服を着ているが、夏越は少女の顔を見かけたことが一度もなかった。
湿気をものともしないで天使の輪を輝かせている黒髪は、まるでシルクのように軽やかで美しい。
ブラウスが透けかかっている。
夏越は目をそらしながら、少女にハンカチを差し出した。
「キミ、転校生?」
「私はロシェル。夏越は私のことを知らないのね。無理ないわ」
ロシェルはそう言うと、鞄から大判のスポーツタオルを取り出して、夏越の頭にフワッと被せた。
そして残りの半分を自分の頭に被せて人懐っこい笑顔を見せる。
最初のコメントを投稿しよう!