第一章

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雨が庇を伝って幕のように降り、外の景色がまるで見えない。 二人は木でできた狭い長椅子に、微妙な距離を開けて腰かけた。 少女は夏越と同じ高校の制服を着ているが、夏越は少女の顔を見かけたことが一度もなかった。 湿気をものともしないで天使の輪を輝かせている黒髪は、まるでシルクのように軽やかで美しい。 ブラウスが透けかかっている。 夏越は目をそらしながら、少女にハンカチを差し出した。 「キミ、転校生?」 「私はロシェル。夏越は私のことを知らないのね。無理ないわ」 ロシェルはそう言うと、鞄から大判のスポーツタオルを取り出して、夏越の頭にフワッと被せた。 そして残りの半分を自分の頭に被せて人懐っこい笑顔を見せる。
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