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塩味せんべいをかじりながら、パッケージを見つめる。君は塩味なのに、何故にサラダ味と名付けられておるのか…。
ふと、強い視線を感じ、目線を下げると『エム』が物欲しげに、こちらを見上げていた。
「これは、しょっぱいから君は食べれないのだ。塩分過多の体に悪い食べ物なのだよ。」
エムはクリクリの目でこちらを見つめたまま、首を傾げた。あぁ~、なんて愛らしいのだろう。
エムの名付け親は僕だ。
小学校入学を控えたある日、父がランドセルを買いに連れて行ってくれるコトになった。
父と向かったショッピングモールで僕は浮かれまくっていた。自作のランドセルのテーマを大声で歌いながら、スキップまでしていたのだから、それはかなりの浮かれ具合だった。
催事場へ向かうためエスカレーターに乗ろうとした僕と父は、横にあったペットショップを見付けてしまった。
ペットショップの硝子展示の中で子犬がジャレあっていた。僕と父は顔を見合わせ、エスカレーターには乗らず、ペットショップへと向かった。
ランドセルは逃げたりはしない。
人気のミニチュアダックスやチワワ、シーズー、ティーカッププードルは、もはやヌイグルミのような可愛さだった。
「アキト、見てみなさい。」
父の指先を辿ると、展示ケースの片隅で僕ら親子を見つめる瞳があった。
父と僕は頷き合い、父はランドセルを買うために母に渡されたお金を取り出した。
「買い間違えたコトにしよう。」
父は、はっきりとそう言った。
そう、僕と父は『黒色のランドセル』と『黒色の子犬』とを間違えて買うのだ。
誰にだって、間違いはある。
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