第1章 同じ黒色だったので

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僕は小学校にはエムを背負っていく覚悟をしていた。ランドセルと間違えて買ってきたのだから当然だ。 エムの口の中には教科書やノートは入らない。だから、僕はエムを背負い、両手に教科書やノートを持って登校しなければならない。 ウチに来てからも、エムは大人しかった。無駄吠えはしないし、ウンチやオシッコも散歩の時にして、家の中で粗相をすることはなかった。柴犬は本当に賢い。 これなら、学校に行っても大丈夫だろう。 そんな覚悟をしていた僕に、岡山のジイちゃんとバアちゃんからランドセルが届いた。 あんなに憧れていたランドセルなのに、エムと出会った程の感動はなかった。僕は、とりあえず空っぽのランドセルにエムを入れてみた。 ふたを開けたランドセルから、エムが顔を出す。なんて可愛いんだろう。父と母も夢中になって写真を撮った。 ジイちゃんとバアちゃんに書いたランドセルのお礼の手紙には、エムの入ったランドセルを背負う僕の写真を添えた。 ランドセルが届いたことで、エムは無事に黒柴として我が家で平穏な日々を過ごせることになった。 エムは父が仕事から帰宅する時間に、玄関で座って父を待つようになった。尻尾をこれでもかと振って父を迎えるエムに、父は毎日デレデレだ。 エムは母のガーデニングを荒らしに来る猫を追い払うようになった。怪しいセールスマンもエムのおかげで、我が家に近寄らない。番犬としても優秀で、昼間の母のおしゃべりも黙って聞いているエムに母もメロメロだ。
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