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「ルミちゃんのその気持ちに困ったりしないよ?でもね、僕は同じ物を向ける事は出来ないんだ。悲しい事だけど。それでもね、今僕に向けてくれてるその感情を他の男にルミちゃんが抱く事は許さない。この気持ちは複雑なんだ」
ごめんね。
と麻耶くんは微笑む。
いつだってそう申し訳なく笑うんだ。
複雑だと言う麻耶くんの気持ちは本当なのだろう。
だって言われた事をルミは半分も理解出来なかった。
「だから、それ以外でルミちゃんが僕に望む事は何だってするし、したいんだ。ルミちゃんがくれるなら僕は毒りんごでも喜んで食べるよ」
…要は付き合えないけど一緒には居てくれるって事なのだろうか?それはなんと、ルミにとっても素晴らしい名案だった。
人の解釈はそれぞれであって、自分の良い方に捉えられるならそれに越した事はない。
だってそれこそルミの求める架空の世界。
やだ、どうしよう。
心が歓喜に震えてしまう。
だから王子様は厄介なのだ。
その甘い囁きに魅了されどんどん惹かれていく。
「毒りんごなんてルミ持ってないよ?」
残念だなと笑っていると柔らかい視線を隣から感じた。
まぁ、何と幸福な時間なのだろうか。
物語の終結の様にいつまでもいつまでもこうして幸せでいたい。
「でもどっちかと言えばルミが食べたいな。それでお花が沢山捧げられた棺で、王子様が迎えに来てくれるのを待つの」
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