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2人掛けの腰起きに物を置く余裕は無いので、お互い膝の上にお弁当箱を乗せていただきますと手を合わせた。
昨日はここに麻耶くんが座っていたのに、容姿は同じでも今は真侑が座っている、妙な感じだ。
でも何だか落ち着く。
昨日は肝を冷やしたり動悸が物凄く早まったり、体の中が忙しなく活動していて大変だったから。
でもルミの願い事が叶ってとても幸せだった。
麻耶くんとキスした事、真侑に言った方が良いのかな…?
「あ!今日りんご入ってる」
真侑が嬉しそうにデザートのタッパーを開けて言った。
ドキッと心臓が音を立てる。
今そのフレーズを聞くと嫌が応にも反応してしまう。
「ルミもりんご食べる?」
この前もらったからと差し出す真侑のりんごを喜んで口に咥えた。
「お味はいかが?白雪姫」
そう言って微笑む真侑は昨日の麻耶くんその物で。
本当にりんごに毒が入っていたかの様に、ルミの身体を言い知れぬ何かが蝕んでいく。
ドクドク騒ぎ出すこの感覚は何?
今目の前にいるのは真侑なのに、どうして麻耶くんに見えるの?
その時麻耶くんの言ったある言葉を思い出した。
“それでもね、今僕に向けてくれるその感情を他の男にルミちゃんが抱く事は許さない。この気持ちは複雑なんだ”
なぜそれが蘇ったかは分からないが、一つだけこの毒りんごによって解釈できた。
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