屋上のベンチ 試し読み

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 晴れ渡る空、白い雲。気持ちいい日光を浴びながら、私は一人どんよりとしていた。屋上にあるベンチに座ってこれからの人生を悲観していたのだ。 「何でこんな事になるの……?」  交通事故に巻き込まれて、幸い軽い怪我ですんだものの、頭を強く打ち付けたせいでとある後遺症が残ってしまった。 「自分以外の顔が、人外に見えるだなんて……!」  病院のベッドで目覚めた私を待ち構えていたのは、大きな角を生やし鳥の頭をした母の声を持つ者だった。それは泣きそうな声で私の名前を呼び、抱きついてきたのだ。当然、私はパニックになり泣き叫ぶ。する魚の頭や貝の頭などなど、様々な人外の頭をしたナース服達が私を取り押さえる。鎮静剤を打たれ、動けなくなるとベッドに寝かされた。  私は不思議な世界に迷い込んでしまったのだろうか。自分以外の人間が全て人外の頭を持つ者に見えるだなんて。目が覚めても半狂乱だったが、カーテン越しに母の泣く声が聞こえて少し落ち着いた。  山羊の頭をした医者がやってきて、私の話を聞く。怖いのでカーテン越しにしてもらった。  医者の見解はこうだった。頭を打った後遺症だ、と。強いショックが幻覚を引き起こし、今の状態になっているらしい。再び強いショックを受ければ治るかもしれないが、今のところ様子を見るしかない。苦しいかもしれないが、本人が慣れるしか道はない。つまり、治る見込みはなくこの苦しみはもしかしたら永遠に続くかもしれないという事だ。私は絶望し、食事すらできなくなってしまった。  一週間ほど点滴生活が続き、ベッドで寝続けたが意を決して私は屋上へとやってきた。見るもの全て化物。鳥とか動物系はまだファンタジーと思えるが、虫やどう見ても神話生物と思われる頭は恐ろしくて仕方が無かった。母ともろくに離せない。こんな呪われた世界なんて、いらない。世界がなくならないのなら、私がさよならするまでだ。  点滴だけで、水分以外何も口にしていない私は震える足をふんばってベンチから立ち上がる。そしてふらふらと手すりまで歩いていく。下を覗き込むとあまりの高さに立ちくらみがした。この高さなら、確実にぐしゃりだろう。全身が震えた。 「人生十七年……短い生涯でした……」
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