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市街地から少し外れた場所に、白一色で統一された藤島メンタルクリニックがあった。
建物はまだ新しく駐車場のスペースは10台分あり、職員と患者共用で使用されていた。
中の待合室は落ち着ける空間として工夫され、熱帯魚の水槽や観葉植物などが置かれていた。
そこへ一人の男性患者が入って来ると、スリッパに履き替え受け付けにやって来た。
受け付けには森山愛が応対し、患者を案内していた。
「石田 開二(いしだ かいじ)さんですね。診察券と保険証をお返しします。番号札3番でお待ち下さい」
愛は笑顔で応対すると、石田に番号札を渡した。
石田は受け付けにいる愛の顔をしばらく見つめると、動きを止めた。
「どうかされましたか?」
やはり元グラビアモデルの彼女に見覚えがあったのだろう。
「あっ・・いえ。どこかで見た様な気がしたもので、つい・・・」
「そうでしたか。受け付け番号を呼ばれるまで、しばらくお待ち下さい」
愛は再び笑顔で応対するも、内心は動揺していた。当分の間同じ様な状況が続くと考えると、気が重くなっていった。
石田はそのままソファに腰を下ろすと、雑誌を手に取って時間を潰していた。
やがて看護師の女性が現れると、患者の番号札を呼んだ。
「受け付け番号3番の方、診察室へお入り下さい」
石田は自分の番号を確認すると、診察室へ足を運んだ。
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