欲望と音の調べ

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数日後、鬼塚と渡辺は事件現場へ来ていた。 一軒家の玄関先にはKEEPOUTの黄色いテープが張られ、警官数人が立ち入りの監視業務を行う。 中の現場では鑑識や警部補などが慌ただしく現場検証をして、事件性があるかどうか確認作業に追われていた。 「首吊り自殺か・・・」 鬼塚の目の前には、ロープで首を吊った男性の遺体がまだ宙に浮いた状態だった。彼としては早く降ろしてあげたい気持ちでいっぱいだったが、現場保存を優先させなければならず遺体の前で手を合わせるのがやっとだった。 「鬼塚さん!身元が判明しました」 彼の隣で渡辺が手帳を開げて、話しかける。 「教えてくれ」 「はい!遺体の身元ですが、この家の主人、石田開二41歳。死因はロープによる窒息死、死亡推定時刻は本日の午前10時から午後15時の間だと思われます」 「自殺の動機は?」 「はい、石田には多額の借金があったらしく、消費者金融からの借り入れも確認取れています。それで・・・」 渡辺は少し言葉を詰まらせると、鬼塚を見た。 「どうかしたのか?」 「藤島先生の精神科への通院歴もありまして、ギャンブル依存症で通院してたみたいです・・・」 「藤島先生とこの患者さんか!?」 鬼塚は驚きと共に何か気まずいものを感じた。 「藤島先生ショックでしょうね・・・」 渡辺は遺体を見上げながら呟く。 「ちなみに生命保険とかは入っていたのか?」 「鬼塚さん、それなんですが・・・。生命保険の受け取り人が、ご家族では無いんですよ!」 「身内じゃ無いって、どう言う事だ!?まさかサラ金の相手先か!?」 渡辺は首を横に振ると、疑問の表情を浮かべた。 「受け取り人の名義は、宗教法人"三光真教"(みひかりしんきょう)代表の"三光真"(みひかりまこと)です!!」
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