欲望と音の調べ

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「宗教法人だと!?何のつながりがあるんだ」 鬼塚は予想に反した内容に、戸惑いを見せる。 「石田の妻、憲子(のりこ)がそこへ入信しています!」 「奥さんの方か!?洗脳でもされたか・・・。保険金の詐欺犯罪の可能性があるな」 「その妻の憲子さんですが、現在も連絡が取れていません」 渡辺の回答に鬼塚は難色を示す事件になりそうな嫌な予感がした。 「渡辺、その宗教法人へ行くぞ!!」 「了解です!!」 その日の夕方も駅前広場では、数グループのミュージシャン達が路上ライブを披露していた。 その中に藍染響ちゃんと何故か沙織も一緒に、ライブに参加していた。 十数人の人だかりの中、響ちゃんがメインボーカルとエレアコ(アンプにつないで音を出せるアコースティックギター)を。沙織はエレキベースとサブボーカルを担当して、演奏を披露していた。 周りからはアットホーム的な声援が飛び交い、まさに皆んなで音を楽しんでいた。 「沙織も上手だよね~。ここ数日で曲が弾ける様になるんだから・・・」 加奈ちゃんは感心した様子で、沙織に目を向ける。 「沙織はもともと器用なタイプだからだよ。羨ましいかぎり」 私も率直な意見を述べた。その隣では音々が黄色い声援を沙織に送る。 そんな楽しい雰囲気の最中の出来事だった。 「女二人で、下手くそな音楽やってるねぇ」 賑やかな空気に水を差す様な言葉に、皆の視線が集まる。 派手な格好をしたビジュアル系の男4人組が、乱入して来た。 その時私達の周囲からは、"エクササイズ"と言う単語が飛び交っていた。多分彼らのグループ名だろう。
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