欲望と音の調べ

23/31
前へ
/170ページ
次へ
源氏は演奏を止めると、ロン毛の男にギターを返した。 「悪いな、下手くそな演奏で。せっかくの良いギターが台無しだ。おたくの上手い演奏で聴かせてくれ、このストラトを」 「いぇ、とんでもないです~。今日はちょっと用事を思い出したんで」 男は急に態度を変えると、敬語で源氏に話しかけた。 「あの・・・、もしかして、音無源氏さんですか?」 「だとしたら、どうする?チップでもくれるのか!?」 それを聞いた瞬間、エクササイズのメンバーは慌てて楽器をしまい込むと、苦笑いを浮かべた。 「失礼しましたー!!」 そして走って立ち去る。 「何だ?アイツら・・・」 源氏は走り去っていく"エクササイズ"4人組を、シラけた眼差しで眺めた。 それは私達も同じだった。 「あのっ、すみません!!」 「んっ!?」 藍染響は音無源氏の側へ寄ると、声をかけた。 「あの、チャラ男達を追い払って下さいまして、ありがとうございました!!」 そして彼女は、源氏に頭を下げる。 「あぁ、良いってことよ。中途半端に偉そうな態度をとられると、腹が立つんだ。嫌いなんだよ、ああいう調子の良い連中は」 「それは私もです!自己中て言うか、人の迷惑を考えない人達は最低です!!」 源氏の言葉に響は共感すると、眉間にしわを寄せた。 「それにしてもあんたは、良い声してるな。最近よく聴かせてもらってたぜ」 「あ、ありがとうございます!!私、藍染響って言います!!良かったら・・あの、お名前教えて貰えませんか?」
/170ページ

最初のコメントを投稿しよう!

52人が本棚に入れています
本棚に追加