欲望と音の調べ

24/31

52人が本棚に入れています
本棚に追加
/170ページ
響の質問に、源氏はちょいワルな笑顔を見せた。 「源氏だ。音無源氏、よろしくな」 その名前を聞いて響は驚く!! 二人が会話をしている間、沙織は私達のもとへやって来た。 「沙織、大丈夫?」 私が心配して声をかけると、彼女は疲れた表情を見せた。 「天海・・・、へこんだよ。人前で弾くの自粛するわ」 沙織はテンションを下げると、うなだれた。 「大丈夫だよ、沙織!ちゃんと、ベース弾けてた」 加奈ちゃんが慌てて、沙織を元気づける。 「ただ弾くのと演奏するのじゃ、全然違うよ加奈~」 私にはよく分からない世界だが、上手くなればなるほど、個性やセンスがその人の演奏に出てくるのだと言う。 実際目の前で弾いて見せた、彼の演奏は凄かった。 ギターの音色が、生きてる様に聴こえた!生物の鳴き声の様な音色・・・。 「プロからもスカウトが来てて、有名なインディーズバンドの助っ人も参加しているあの源氏さんですか!!?」 源氏は頭をかきながら苦笑いをする。 「まあ、周りはそんな風に言っているが、俺は好きで弾いているだけだ。バンドメンバーに収まる気もないし、自分で組んだりもしない。束縛されるのが、嫌なんだ」 響はまさかの有名なギタリストを目の前に、興奮して瞳の周りにキラキラ星を飛ばしていた。 「今は何処かのバンドの助っ人に、入ったりしてるんですか?」 その話を聞くと源氏の表情は曇った。それから、自分の両手を見つめる。
/170ページ

最初のコメントを投稿しよう!

52人が本棚に入れています
本棚に追加