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「他にはどの様な事を?」
「次は金のペンダントです。それは三十万円と言っていました。身に付けているだけで、幸福になれると」
私の金銭感覚では、とても理解しがたい内容だった。高い買い物でも洋服でせいぜい一万円ぐらいだ。
「妻は入信してからというもの、毎日金の像に向かって変な呪文を唱え、私の話に耳を傾けようともしません」
岩城は視線を下に向けると、厳しい表情を見せた。
「岩城さんの奥様がどう言う悩みや心境で入信されたのかは分かりませぬが、心の闇を突かれて洗脳を受けたのは確かなようですな」
阿闍梨の言う通り私でも話しの内容で、洗脳にかかった奥さんの様子が想像出来た。
「それで有名な日岩寺の和尚様に、一度お願いに参りました。どうかおかしくなった妻を正気に戻して下さい!!」
岩城さんは私達二人に深々と頭を下げると、固まった。
「岩城さん、頭をおあげになって下さい!!奥様の件は私どもが責任を持って解決させていただきます」
「本当ですか!?ありがとうございます!!」
阿闍梨の決断に岩城さんは顔を上げると、喜びの表情を浮かべた。
そこへ雲海様も丁度本堂へ入って来た。
「岩城さん、お待たせしました。雲海と申します」
雲海様は私の隣に足早に来ると、静かに正座をした。
「雲海よ、ちょうど今岩城さんのご相談を引き受けたところだ。天海と一緒に一度岩城さんの奥様に会って来てくれ」
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