第二章

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私の聞き慣れない言葉に、八雲さんは疑問の表情を浮かべた。 「平安時代で貴族に使え、陰陽師として名をはせた"安倍晴明"がよく使っていたと言われる術だ。札や人形に文字を記して、それをいろんな形に具現化する事が出来る。"文字という呪"の縛りで、時には人を呪い殺す事さえ可能だ」 陰陽師に詳しい音々が、内容を付け加える。 それを聞いた刑事二人は、ちょっと待てと言わんばかりのリアクションを見せた。 「音々さんの言うことが本当なら、石田さんの自殺も簡単に動機付けできますね…」 渡辺さんの呟きに、鬼塚さんが彼の頭を殴る。 「アホか!渡辺!!納得するな。俺達は刑事だ!! まずは石田さんの奥さん、石田憲子(いしだ のりこ) を疑うべきだろう。事件のキーマンを探して、話しを聞かなくてどうする!!?」 「す、すみません」 渡辺さんは頭のてっぺんをさすりながら、不服そうにも謝った。 その時だった。 ロビー通路入り口から、着物姿の女性が現れた。白い生地に金の蛇の刺繍を施し、首元には白いファーを何重にも巻いていた。 「ロビーにいる皆さん、マコト様のセミナーの準備が出来ました。大会場の方へ移動して下さい」 その女性のマイクアナウンスが終わると、ロビーに集まっていた信者達がいっせいに動き始めた。 「あの女性は彦摩呂と違いますが、巨大な白蛇が背後に憑いてますねぇ。何者なのでしょうか?」 雲海様と同様に私と音々も、彼女に憑いている白蛇の霊を視る事が出来た。 かなり巨大で、彼女を包む様にトグロを巻いていた。 「あの女性は、左大臣(さだいじん)蛇紅蓮(じゃくれん)と言っていた。我々が入信手続きをする時、受付をしてくれた方だ」 鬼塚さんが彼女を見つめながら、教えてくれた。 「どうやら彦摩呂姉様以外にも、厄介な奴が居そうだな」 冷静に答えた音々だったが、彦摩呂はお姉様に成り上がったままだった。
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