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君に会いたくて、
君の手の温もりを思い出して、
僕の手は空を彷徨う。
君との日々を思い返しながらぼんやりと過ごす僕を心配して、毎日のように子供たちが孫を連れてやって来てくれる。
温かな湯気のたつ手料理がテーブルに並び、賑やかで明るい笑顔が目に映る。
賑やかさが消えると途端に寂しさが募った。
子供たちは一人きりで居る僕に一緒に住もうと言ってくれるが、君との思い出溢れるこの場所から離れたくなくて頑なに断る僕に呆れて苦笑する。
それでもここに通い、様子を伺ってくれる子供たちに僕は感謝しているよ。
君は本当に素晴らしい子育てを施してくれたんだね。
君によく似た性格の優しい子供たちを残してくれて嬉しい。
僕は君に感謝しても仕切れないよ。
何もしてあげられていない僕を、君はその小さな体で支え続けてくれているのだろう。
君のそのか弱く小さな手で守ってくれているのだろう。
僕がそうしてあげたいと誓いまでたてていたのに、逆にそうしてもらっていたのだと改めて感じて心が痛む。
君を失くしてからどれ程の時が過ぎただろう。
君に会いたくて堪らない。
───でも、それも遠くはないようだ。
僕は今、君と同じように白くて清潔なベッドの上で寝ているのだから。
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