てて

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君の手に何度触れただろう。 白く柔らかな手は結婚すると僕の手に触れる回数が減ったように思える。 互いに仕事を持ち、朝と夜遅くにしか顔を会わせる事もなく、休日は日頃の疲れを癒すためだけに時間を費やした。 君は仕事に家事、子育てと合わせて一際(ひときわ)手の掛かる僕の世話まで毎日忙しく動いてくれていた。 「はい、邪魔!」 などと邪険にしながらも剥れる僕を見て面白そうに笑う。 そんな些細な日常は思いの(ほか)早く流れる。 小さな喧嘩は数知れず(おこな)った。 しょっぱい涙も甘い涙も幾度となく流しては拭っているのを見ていた。 それよりも多くの笑顔を咲かせていた。 子供たちが大きく成長し、独立していく度に君は寂しそうに顔を曇らせた。 僕はそんな君の肩を抱く事しか出来なかった。 「これからは2人ですね」 囁くように呟く声に僕は密かに心が弾む思いを隠した。 酷いと思うかい? 仕方ないじゃないか。 だって、僕はやっと君をまた独占出来ると嬉しかったんだ。 ……僕は君との大切な子供たちに君を奪われたと思ってずっと拗ねていたらしい。 だから、思わず頬が緩んだんだ。
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