プロローグ

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「大丈夫、私は平気よ」 それが貴女の口癖でした。 私たち四人が貴女の声で聞いた最後の音は それは、それは美しく 何度季節が変わっても消えることはありません。 これは貴女の痛みを癒せなかった 私たちへの罰ですか。 それとも夏の陽のように強く情熱的で 冬の月のように凛とした 貴女なりの優しさですか。 私たちは毎夜のように 黒い空へ問いを投げかけるけど 心の底から真実を求めてなんていないんです。 願うことは一つです。 私たちの歩いた跡が 貴女を傷つけないように できるだけ何も変わらずに まるで足踏みでもするように 生きていくことができたなら……。 あぁ、どうして逝ってしまったの。 貴女と分け合うことのできない幸福なんて 私たちは望んでないのに。 貴女と分け合うことのできない幸福になんて 手を伸ばす勇気はないというのに。 いつかあなたの元へ逝った時 「意気地がないのね」とその声で 叱ってもらえたりするんでしょうか。 こんなあまりに身勝手で そしてあまりに欲張りな 微かな願いを身体に宿して 私たちは生きている。 今日も明日も、明後日も 不幸な顔に笑みを乗せ 過ぎ去る幸せに知らん顔して そうやって生きていくのでしょう。
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