第五章 またいつの日か

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「き、貴様ら騒ぐなやかましい!」  天霧が怒鳴るも、賑やかさは収まらない。 「黙れと言っているだろうが! 皆まとめて牢にぶちこむぞ!」  そんな声も、皆の歓声に巻き込まれていった。  季節は巡り、再び春がやってきた。  音和は店ののれんを掲げに外に出る。まだ盛況とまではいかないが、少しずつ客足も戻ってきている。  天霧も時折顔を出しては、彼用の特性湯薬に顔をしかめていた。  あれから――朔耶として生きていたときの記憶が薄れていくのが分かった。いつか、消えてしまうのかもしれない。  けれど。  音和自身が朱戯と出会ったこと、彼に心惹かれ恋をしたこと、そして前世から続く美しい輪廻があったことは、きっとこの先もずっと忘れることはないだろう。 「またいつか、会えますか?」  人好きで風変わりで、とても優しい妖怪に。  そうして見上げた春の空は、どこまでも暖かく穏やかだった。 (了)
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