私の受難 再び

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 雲泥の差。雪と墨。月とすっぽん。でも――だからと言って憧れるかと言えば話は別だ。小さい頃から幾度となく出入りを繰り返した屋敷だ。庭でかくれんぼもした。あまりの屋敷の広さに迷子になり泣いてしまったことだってある。  だから思い出がないと言ったら嘘になる。でもそれだけだ。現実を直視出来る年頃になってしまえば、特別な感情はない。 「別に私は住みたいと思わないんだよね」  だからなんだろう。母親の言葉に共感が持てない。
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