私の受難 再び

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「何だ。夫が他の女についていってもいいのか?」  奏が小気味良く口を挟んでくる。無駄口を叩かず、一番効率的だと思うところで口を開くのがいちいち憎らしい。間違いなく奏は、この状況を楽しんでいる。殺す。絶対に後で殺す。 「夫って? やっぱりそういうこと?」 「ち……違うの違うの。彼ね、私より三ヶ月後に生まれてるの。近所の弟みたいなもんなのね。おとうとを略して゛おっと゛。ちなみに私は近所のお姉さんだから、゛あっと゛って呼ばれてます」  これ以上、苦しい言い訳もないだろう。実際、紗栄子も、そして取り巻きの女子生徒たちも、明らかにいぶかしがった顔をしている。
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