未知との遭遇

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 シウエレス暦27年。  今から110年程前,僕たちの星のすぐ近くに巨大な人工物が現れた。  厳密に言えば,現れたというよりはもっと長い時間をかけて,この星を目指して航行してきたんだと思うけど。  その物体が接近していることを知った当時の人々はそれが地球と衝突するのではないかと大騒ぎになったらしい。だけど,そいつは近づくにつれてどんどん減速していき,最終的にこの星とこの星の衛星の間にある,重力の均衡が取れた場所(ラグランジュポイント)で静止した。  この人工物の調査をすべく,多くの国や機関がこぞって技術競争をはじめ,この星の科学技術は急速な進歩を遂げた。でも,何度も調査隊を派遣したのにもかかわらず,人工物の中に入ることさえできなかった。わかったのは,せいぜい中に巨大な空間があるということと,外殻が未知の物質で構成されていることくらいだった。  エニグマ(謎という意味)と呼ばれるようになったそいつは,しばらくの間は人々を熱狂させたらしい。だけど,そこに佇むだけでなにも語らず動かずの謎は,次第に興味を持たれなくなっていった。
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