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夏の日の早朝だった。近所の山へ釣りに出かけた途中で,僕は奇妙なものを目撃した。
くねくねとした山道を自転車を立ち漕ぎしながら必死に登っていると,少し先の山の斜面が一部だけ削れていたのだ。
不審に思った僕は,そこまで上り詰め,ガードレール越しに下を覗きこんだ。
「ロボット?」
僕がロボットだと認識したそれは,木々をなぎ倒した状態で谷底に倒れていた。とても大きい人の形をしていて,アニメに出てくるロボットそっくりだった。
それを見てしまった僕は,好奇心を抑えきれなかった。人型巨大ロボットと言えば男子たちの夢なのだ。それが今,目の前に存在している!
「目的変更!釣りなんてどーだっていいや!」
自転車を道の脇に止め,僕はガードレールを飛び越えた。
急な斜面に足を取られ,前に何度もよろけながら進んだ。転べば,止まることもできずにそのまま木に激突するか,谷底まで直滑降するのは間違いない。それでも,もっと近くであれを観たかった。
危険を恐れていたら,冒険なんてできない。
木々を避けながら跳ぶように斜面を下ってゆくうちに,ロボットがグングンと近づいてきた。
「うわー!すげー!かっこいいー!」
間近で見るそれは,想像以上に大きかった。足のサイズだけでも,僕の身長の2~3倍以上はあると思う。つま先から出ている,二本の尖った爪のような部分もあわせたらもっとだ。
恐る恐るそれに触ってみると,ひんやりとしていて固かった。やっぱりロボットだと確信した。
今度は頭の方に回ってみる。かなり距離があるように感じた。
つるつるの禿げ頭だ。正面には三つの目がついていて,髭のようなものも生えている。
「変な顔・・・」
そう言えば,体の真ん中にあった部分が扉が開いているような感じで上下に開いていたのを思い出した。ここまで来たら,見に行かないわけにはいかない。僕はロボットの手からよじ登って,胴体まで歩いて近づいた。
開いた扉の中は空洞になっていて,色々な機械がごちゃごちゃしていた。アニメではよくコックピットがこの部分にあるのに・・・残念。
コツン,と何かがロボットを覗きこむ僕の後頭部にぶつかった。
なんだろうと思って振り向くと,目の前にはピストルのようなものが突きつけられていた。
それを持っていたのは,ヘルメットを被り,変なツナギのようなものを着た人だった。
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