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この光景は映画やアニメで良く見るシーンとそっくりだ。こんなときはどうするんだっけ・・・と,僕は妙に冷静だった。まだ夢を見ているような気がしていて,アニメや映画の登場人物になっているような気分だった。
僕はゆっくり両手を上げながら立ち上がった。
そのとき,ヘルメットを被った人物が何か喋ったが,聞いたことが無い言葉だった。外国人だろうか。
僕がキョトンとしてその人を見上げていると,その人は僕に銃を向けたまま,ヘルメットの横側についている装置のボタンを押し始めた。しばらくピーッという音が繰り返し聞こえた後,ピピピッと短く繰り返されて鳴りやんだ。
「何者だ。ここで何をしている」
男の人の声だ。ずいぶんと強めな言い方だった。銃を突きつけるくらいだから当然だろうけど。
「えーっと,僕は・・・ショウです。ショウ・キリオ。ここではえーっと・・・」
何て答えたらいいんだろう。珍しいものがあったからつい見に来ちゃっただけ。と言えば怒らせてしまうかもしれない。でも,正直上手い言い訳なんて思いつかなかった。
「ロボットを見に来ました!」素直に答えるのが一番いい。
「どこから来た?なんでこんなところにいる?」
質問攻めだ。何か変な疑いをかけられている気がする。
「何か,疑われてますか?」素直に訊いてみることにした。
「質問に答えろ」 銃を微かに動かして威嚇しながら男の人が言う。
だんだんと今自分が危ない状況にいることに気が付いてきた。下手すれば殺されちゃうかもしれない。
「町から来ました。エイヘムです。山のふもとの・・・」声が震えているのが自分でも分かった。
「ここには釣りをしようと思ってやってきました。趣味で・・・」
パァン!!
乾いた銃声が山の中に鳴り響いた。
それと同時に,僕の頭のすぐ後ろの方で何か固いものが砕けるような音がして,何かが視界の端を横切って前へ飛んで行った。
咄嗟に振り向くと,生き物をモチーフにしたような機械人形が,ロボットの左肩の横に転がっていた。まだ微かに動いている。その骨ばってトゲトゲしい外見は見るからに凶悪そうだった。
「お前,釣りに来たと言ったな」
男の人が話しかけてきた。見ると,左手で右肩を押さえている。
「あっ!」
僕は思わず声を上げた。その人の左手の隙間から赤い血が流れていたのだ。
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