第4章 心霊探求

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 陵平はふらつきながらも私に気を配り続けて歩いた。互いに支え合いながら丘を下り、タクシーを降りた場所までやってくると、自動販売機で水を買って無言のまま五百ミリペットボトルを飲み干した。  そして異変は始まった。  ここまで無言だった陵平がバス停の古いベンチに腰を下ろした途端、堰を切ったように話出した。 「自分のことダメな奴だと決めつけてる奴は、こっちが励ましたって全然耳に入っていかないんだ。 頭の中じゃ、自分を責めたてる言葉でギュウギュウ詰め。目からは光が消えてる。 どこまでも無限に続く闇の中にいるような絶望しか見えていない。 俺はそんな連中から弾き出されたんだ。 じいちゃんがどんなに探しても、親父もおふくろも今だに行方不明さ。借金がどれだけあったって、それで家族を失うことになったっとしたって俺は生きているんだ。俺は俺の人生を生きる権利がある。あんな暗い連中なんかには絶対に負けないからな!」  私は言葉が見つからず、陵平の気持ちを感じていた。  家族とはぐれた。  そんな哀しい怒りが全身から伝わってくる。  陵平がなぜ私に好意を持ったのか、何となく理解できた気がした。
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