第5章 深淵を覗くとき

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「さっき居た場所はどうも苦手だ。要らんことばかり思い出して気分が滅入っちゃって……」  陵平はいつもの脱力系な口調に戻って、微笑んだ。 「甘く考えてた。巻き込んじゃってごめん」 「俺が勝手に着いてきたんだ。そんなに気を遣わないでよ」 「やなこと思い出すって、結構キツイよ。 思い出さない方が幸せなことのひとつやふたつ、お前にもあるんだろ?」 「俺、格好悪いじゃん」 「なんで?」 「ベラベラと喋り過ぎたわ」 「そんなことない。格好悪くなんかないさ。ただ、普段はこんな話は誰もしたがらない。自分が弱くなったような感じがするから。実際、気持ちが弱ってしまうんだもん。無防備になれる相手ってそんなに多くはないんじゃない?」 「……そりゃそうだ」 陵平は照れくさそうに微笑んだ。
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