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「まどか?」
名前を呼ばれただけなのに、私は飛び上がるほど驚いた。
いつの間にか私の前に立っていた陵平が、その大きな手で頬を包み込む。長い指が涙を拭って、労わるように優しく触れてきた。
「友達の心配も良いけどさ。
……やっぱり、今日はもう帰った方が良いんじゃない? お前も辛いんだろ?」
辛い、という言葉が響いて胸の苦しさに締め上げられる。
いくら拭いてくれたって、涙はそう簡単には止まらなくなっている。
「……っく。屈辱だ」
「はは……負けず嫌いなんだから」と、陵平は苦笑いした。
「言っておくがな!これは全部、あの連中のせいだからな!!」
泣きながらけん制なんて、無様なことをしてしまうのも全部悪魔の仕業にしてしまえ。そんなことを考えている余裕があるのは、良い兆候だ。陵平の癒しは抗を制してきている証拠だと思われる。
「はいはい。普段のお前は人前で泣くなんてみっともない真似しないもんな。わかってるから、そこは笑わないから、今は泣いちゃえばいんじゃない? 俺が隠してやるからさ。こんな薄い胸でよければ、いくらでも貸してやるし」
優しい言葉に不慣れな分、脆くなった涙のダムは完全にコントロール不能になった。
道端で泣くなんて小さな子だけの専願特許だろうに。
頭の片隅には冷静な自分がいて、今はただ泣きじゃくるもう一人の自分を親心のような気持ちで見守った。
陵平がいるというだけでこんなにも気持ちに余裕が持てるなんて、新しい発見だった。

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